相続した実家、どうする?「売る・貸す・残す」を決める前に考えたいこと
2026.09.26

親が住んでいた実家を相続することになった。
自分が住む予定はないけれど、思い出のある家だから簡単には手放せない。
かといって、ずっと空き家のままにしておくのも心配。
「売った方がいいのか、貸した方がいいのか。それとも、そのまま残しておくのか。」
実家の相続では、こうした悩みを抱える方も少なくありません。
不動産の仕事をしていると、つい「この家はいくらで売れるか」「いくらで貸せるか」という物件の話から考えてしまいがちです。
でも最近、不動産コンサルティングの勉強をする中で改めて感じるのは、
まず考えるべきなのは不動産そのものではなく、持つことになった人のこれからだということです。
まずは「どうしたいか」を整理する
所有者の目線から不動産の活用や処分を考えると、
絶対に「売る・貸す・残す(自分で使う)」の3つにいきつきます。
でもだからと言って、相続した実家をどうするか考えるとき、
いきなり「売る・貸す・残す」を決める必要はありません。
むしろ決めない方がいい場合もあります。
まず整理したいのは、
・今後、自分や家族が住む可能性はあるか
・家や土地にどのくらい思い入れがあるか
・維持管理にどのくらい費用がかかるか
・定期的に建物を見に行けるか
・相続人が複数いる場合、みんなの考えはどうか
・将来的にまとまった資金が必要になる予定はあるか
といったことです。
同じような家でも、所有する人の状況が違えば、選択肢は変わってきます。
そのうえで、大きく「売る・貸す・残す」の3つを考えてみます。
「売る」という選択

売却の大きなメリットは、
不動産を現金化できることと、その後の管理から離れられることです。
空き家であっても、所有している限り固定資産税はかかりますし、庭木の手入れや建物の管理も必要です。
古くなれば修繕が必要になることもあります。
今後使う予定がなく、管理を続けることが負担になるのであれば、売却は有力な選択肢になります。
一方で、思い入れのある実家は、一度手放すと基本的には取り戻せません。
また、相続した空き家の売却では、条件によって税制上の特例を利用できる場合もあります。
「いつ売るか」によって結果が変わることもあるため、売却を考える場合は早めに状況を整理しておくことが大切です。
「貸す」という選択

「売ってしまうのは寂しいけれど、自分たちが住む予定もない。」
そんなときに考えられるのが、賃貸物件として活用する方法です。
家を残しながら家賃収入を得られる可能性があるのは、大きなメリットです。
ただし、ここで注意したいのが、「貸せば家賃がそのまま利益になるわけではない」ということ。
古い家であれば、貸し出す前に水まわりや内装などの改修が必要になるかもしれません。
貸し始めた後にも修繕費や管理費がかかり、入居者がいない期間も考えておく必要があります。
貸す方はこのくらいの汚れは大丈夫だろうと思っていても、借りる方の目線はシビアです。
そのニーズに合わせるためには多大な出費となってしまうこともあります。
例えば月7万円で貸せそうな家でも、貸し出すために数百万円の改修が必要なら、
その投資が本当に見合うのかまで考えなければなりません。
「いくらで貸せるか」だけではなく、貸すためにいくら必要で、その後どのくらい手元に残るのか。
ここまで考えて初めて、「貸す」という選択肢を比較できます。
「残す」という選択もある

そしてもう一つが、すぐには売ったり貸したりせず、そのまま残しておく方法です。
「いつか子どもが使うかもしれない」
「気持ちの整理がつくまでもう少し残しておきたい」
そんな理由ももちろんあっていいと思います。
相続したからといって、すぐに結論を出さなければならないわけではありません。
ただし、「残す」と「何もしない」は少し違います。
空き家は人が住まなくなると、換気や通水がされなくなり、建物の傷みに気づく機会も減ってしまいます。
残すのであれば
誰が管理するのか。
どのくらいの頻度で確認するのか。
いつもう一度今後について考えるのか。
まで決めておくと安心です。
また上記にもあるように、相続から時間が経ってしまうと使えない制度もあります。
大事なのは自分たちにはどんな選択肢があるのかを早めに知ること。
そのうえで、「残す」という選択肢を検討してください。
選択肢は3つのうちの「どれか」ではない
ここまで「売る・貸す・残す」と書いてきましたが、
実際の不動産活用は、この3つのどれか一つ、という訳ではありません。
例えば古い住宅を改修して店舗として貸したり、
一部を自分たちで使いながら別の部分を貸したり、
土地の使い方そのものを見直したり。
建物の状態や立地によっては、少し違った活かし方が見つかることもあります。
古い家だから壊す、使わないから売る、と最初から決めてしまうのではなく、
いくつかの可能性を並べてみることが大切です。
「その家にとっての正解」ではなく、
「その人にとっての正解」を
相続した実家について相談を受けたとき、私たち不動産会社が確認するのは、
建物の築年数や土地の広さ、相場だけではありません。
これからその家をどうしたいのか。
何を大切にしたいのか。
どこまでなら管理や費用を負担できるのか。
そうしたことまで含めて考えて、初めて方向性が見えてくるのだと思います。
えびすやでは、不動産の売買・賃貸だけでなく、建築やリフォーム、空き家管理や古い建物の活用にも取り組んでいます。
「売ると決めたわけではないけれど、この実家をどうしたらいいのか一度考えてみたい。」
そんな段階からでも、一緒に選択肢を整理していければと思っています。

この記事を書いた人
森安勇介
えびすや株式会社 代表取締役 / 宅地建物取引士
大学卒業後、大手不動産会社で不動産仲介を経験し、家業であるえびすやへ。2025年に代表取締役に就任。現在は建築についても日々学びを深めながら、「自分がお客様だったらどう感じるか」という目線を大切に、分かりやすく納得できるご提案を心がけています。


