えびすや日記

えびすや家づくり勉強会第6回

よい家は「断熱」「気密」が大事 松尾 和也氏

今回の勉強会は、「あたらしい家づくりの教科書」の中で松尾和也氏の文章をテキストとして、「よい家は『断熱』『気密』が大事」をテーマに勉強をしました。

前回の勉強会では、いい家は温熱に優れていることが大事だということを学びましたが、今回は温熱に優れるということはどういうことなのか、どうすれば温熱に優れた家ができるのかを勉強します。

松尾氏は「いい家は断熱と気密が大事」と述べています。

(1)断熱とは?
断熱とは文字通り熱を断つことですが、冬に人がダウンジャケットを着て暖を取る様に家にも断熱材という服を着せます。
人の服の場合、その服の中身はダウンだったりウールだったりするように家の場合も様々な種類の断熱材があります。
その断熱材の熱の通しやすさを表したものが「熱伝導率」です。

この数値が大きければ大きいほど熱が伝わりやすく、「小さければ小さいほど熱が伝わりにくい」つまり断熱性が高いということになります。

  • 熱伝導率は、「長さ1mの物体の両端の温度差が1℃の時に表面積1㎡、1秒間当たりに流れる熱量であり、熱伝導率の単位は​
    「W/mK」​で表されます。
  • 例えばコンクリートの熱伝導率は1.6
    アルミ 200
    塩化ビニール0.17
    フロートガラス1.0
    杉・桧 0.12
    松・ラワン 0.15
    ナラ・サクラ 0.19
    土壁0.69
    高性能グラスウール16k0.038
    A種フェーノールフォーム保温板1種2号0.022
    上の表からいろんなことが読み取れます。
  • 土壁と高性能グラスウールの熱伝導率を比べてみると
    土壁0.69に対して高性能グラスウール16k0.038ですから
    0.69÷0.038≒18.15
    土壁は高性能グラスウール16kの何と約18倍も熱を通します。

    昔の土壁の家が今の家に比べて寒いのもこれを見ると良く分かります。
    さらに高性能のA種フェノールフォーム保温板1種2号に至っては
    0.69÷0.022≒31.36
    何と30倍も熱を通すことになります。

    逆に言うと、グラスウールやフェノールフォーム保温板はそれだけ熱を通さない。
    つまり、それだけ断熱性が高いということになります。
  • アルミと塩化ビニールはどうでしょう。

    アルミ200に対して塩化ビニール0.17ですから
    200÷0.17≒1176.47
    1176倍もの違いがあります。
    これまで窓といえばアルミサッシが当たり前でしたが、これからは塩化ビニールを使った樹脂サッシが当たり前になります。

    弊社では、窓サッシは新築においては全て樹脂サッシにしています。
    リフォームの場合も同様にできる限り樹脂サッシを使います。
  • ガラスと土壁を比べてみましょう。
    ガラスは1.0対して先に見たように土壁は0.69です。

    アルミから比べるとはるかに断熱性はどちらも高いですが、ここで知っておいていただきたいのはガラスは土壁よりも断熱性が劣るということです。
    ガラスを使っている窓は熱の大きな逃げ道になっているということです。
    このことは次回の勉強会で詳しくお話しますが、断熱性を高めるためには窓が大事ということです。
  • また、余談ですが、ちょっと、面白いデータなのでご紹介します。
    天然木の熱伝導率が出ています。
    それを見ると、杉・桧0.12 松・ラワン0.15 ナラ・サクラ0.19となっています。

    同じ天然木でも針葉樹の杉や桧の方が広葉樹のナラやサクラよりも断熱性が高くなっています。

    考えてみれば、杉・松‣ナラとなるにしたがって木の密度が上がり熱が伝わりやすくなるのでこの数値は至極当然で特に面白くもないのですが、今まで感覚で分かっていたようなことが実際に数値で表されるとなるほどと実感できます。

    弊社では住宅の床に杉を使うことがよくあります。柔らかくて傷はつきやすいのですが、肌に触れた時の感じが優しくて心地よいのでお勧めしています。

(2)気密とは?
松尾氏はこのテキストの中で気密とは「ダウンジャケットのファスナーとダウンを覆うナイロン生地みたいなもの」と述べています。
住宅で言えばグラスウールを覆う気密シートと気密テープと言うことになります。」(下写真参照)

高気密住宅の事をナイロン袋で家を包んだようなものだという方がおられます。
そんな家は息が詰まるような気がすると言われたりもしますが、それは、誤解です。
下の図を見て頂ければお分かりいただけると思いますが、

気密性が高いオレンジ色の家は、右下の換気扇によって排出された空気とほぼ同じ量が対角線上にある吸気口より室内に供給されます。そうなることで、部屋の隅から隅までの空気が喚起されることが期待されます。それに対して気密性の低い青色の家は、同じように右下の換気扇で部屋の空気を排出したとしても換気扇近くの意図しない隙間から外部の空気が入ってきて、本来入ってきてほしい自然吸気口からは、ほとんど入らないか入ってきても少ない風量でしかないことになります。その分換気されない汚れた空気が部屋の中で澱んでしまいます。
このように、気密性が髙い家の方が、きちんと換気計画で計算された換気が行えることで、気密性が低い家よりも、きれいな空気の中で生活ができることになります。

(3)Q値・UA値・C値とは?
断熱と気密についてなんとなくイメージがわいてきたかと思いますが、ここでは、その家の断熱性能や気密性能がどれくらいなのか、それを表す数値についてご説明します。

  • Q値・UA値とは?
    両方とも断熱性を表す数値です。

    Q値:熱損失係数(W/㎡K)の略称
    天井・屋根・床・外壁・窓などの面を貫通して逃げる熱と換気によって逃げる熱の合計を延べ床面積で割ったもの。​

    UA値:外皮平均熱還流率(W/㎡K)の略称​
    換気を含まない、外壁・床・天井・屋根・窓面を貫通して逃げる熱を外皮面積で割ったもの。




以前は断熱性能を表す数値にQ値を使っていましたが最近はUA値が標準になっています。
Q値は逃げていく熱量を延べ床面積で割るので面積の小さい住宅が不利になるということでUA値になったと言われています。
しかし、UA値はQ値の時にはあった換気による熱損失を考慮していませんので、現在でも実際の性能に近い数値を表しているのはQ値の方だという意見もあります。



・C値:C値は相当隙間面積といい、床面積1㎡あたりの隙間量(㎤/㎡)を表します。

​気密に意識のない事業者のC値は3~4㎠/㎡になっていることがおおく、国の基準では2㎠/㎡以下を高気密住宅といいますが1.0㎠/㎡以下を推奨​しています。実際には、0.5㎠/㎡以下でないと高気密住宅として有効に機能しないと言われています。

弊社では通常0.1~0.3㎠/㎡以内​となる様に施工しています。

気密テストの様子。このラッパのような機械で室内の空気を外部に吸い出します。


上の機械で測定して結果の画面です。C=0.1㎠/㎡の文字が見えます。

(4)年間冷暖房負荷
建物の断熱性能を表す数値としてQ値やUA値の事をご説明いたしましたが、
実際に暮らした時の暖かさ涼しさの間隔を示す単位として最も優れているのが年間冷暖房負荷(kWh/㎡・年)​です。

地域の気象データをもとに1年のうち暖房期間5、6ヶ月程度の期間、家中を暖房(設定20℃)し続けるとした場合に投入しなければならない熱量を暖房負荷、

冷房期間2、3か月程度の期間、家中を冷房(設定27℃)し続けるとした場合に抜き取らなければならない熱量を冷房負荷​と言います。
ここで少しこれまでの数値を整理してみましょう。
下の表をご覧ください。

テキストでは
年間冷暖房負荷40kWh/㎡ Q値1.6 が理想的な水準
年間冷暖房負荷60kWh/㎡ Q値2.0 が何とか実現したい水準
年間冷暖房負荷95kWh/㎡ Q値2.7 が国の水準となっています。
ここでは等級6で冷暖房負荷が40kWh/㎡が理想的となっています。

ちなみにパッシブハウスの冷暖房負荷は15kWh/㎡です。
この数値だけ見てもパッシブハウスがどんなに高性能なのかお分かりいただけると思います。

(5)燃費ナビによる実際の建物の数値
では、ここまでに勉強したことをもとに、実際の住宅の性能を燃費ナビを使って表してみます。
「燃費ナビ」はドイツのパッシブハウスインスティテュートが作った計算のシステムPHPPをベースにパッシブハウスジャパンが作った燃費の計算ソフトです。
以下に弊社が昨年建てさせて頂いた住宅と現在計画中の住宅の燃費の計算結果を添付いたします。

最初の計算書は昨年建てさせて頂いた住宅の計算書です。
弊社の標準仕様である、屋根:吹付ウレタン200㎜ 壁:充填断熱吹付ウレタン85㎜+負荷断熱フェノバボード50㎜ 基礎立ち上がり:EPS50㎜ 基礎底盤下:EPS50㎜ 窓:YKKAPW330真空トリプルガラス仕様 第3種換気です。
この仕様で年間暖房負荷が57.54です。
何とか実現したい水準の60は下回っていますが、理想的な暖房負荷水準の40までには届いていません。

2番目の計算書は現在計画中のものです。
昨年の仕様を少しグレードアップしています。
アップした所は、窓をYKKをAPW330からAPW430に変更して、屋根断熱を吹き付けウレタン300㎜にしました。
このことにより年間暖房負荷が42.95まで下がってきました。
理想的な水準の40までもう少しもところまで来ました。
もうあと一息です。
3番目は2番目の仕様に加えて換気システムを第3種から第1種に変えています。
これにより年間暖房負荷は33.72にまで下がりました。
理想的な暖房負荷の40をかなり下回ることができました。

パッシブハウスの条件である15にはまだまだ届きませんが、これならかなり快適で省エネな生活を送ることができますね。
次回の勉強会は、家の断熱にとても大きな影響のある窓について学びます。


TOP